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こんにちは、LSのShioriです。今年も残すところ1ヶ月余りとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。私が住んでいる地域では比較的暖かく天気が良い日が多く、暖房を使わずに過ごせていましたが、ここ2日ほどぐっと冷え込み、今日この秋初めて暖房を使用しました。街ではクリスマスマーケットの準備が進んでおり、1年の終わりが近くまで来ていることを実感しています。

 

それでは今月も頻出エラーを見ていきましょう。今月も誤訳が多く、脱落・付加も目立ちました。これまでと比べて10月は付加が多かった印象です。今回の投稿では、誤訳、構文エラー、脱落・付加の実例を取り上げます。先月の投稿を読み逃した方はこちらからどうぞ。

 

誤訳

原文:I have a few of these aprons, and I bought my first one 10 years ago.

訳文:このエプロンを何本か持っていて、最初に購入したのは10年前です。

訳例:このエプロンを何枚か持っていて、最初に購入したのは10年前です。

解説:エプロンを数える際には、「何本」ではなく通常「何枚、何掛け」を使用します。エプロンのように、体の前面に掛けるものを数える際に「掛け」が使えるそうです。

 

誤訳

原文:Many members staged a walkout to protest his presence at the  ceremony.

訳文:式典に彼が出席したことに抗議し、多くの会員が脱会した。

訳例:式典に彼が出席したことに抗議し、多くの会員が退場した。

解説:念の為文脈を説明すると、これはある組織の会合で実際に起きた出来事について書かれた文章で、この出来事についてのニュース記事を読むと、会員は脱会しておらず、その場を去っただけだということが確認できます。walkoutは「脱会」と訳すこともありますが、この文脈では「退場」と訳すのが自然ですね。

 

構文エラー

原文:I have checked in our application and found that there was an error in the quality process.

訳文:弊社のアプリケーションをチェックインしたところ、品質プロセスにエラーがあることが判明しました。

訳例:弊社のアプリケーションで確認したところ、品質プロセスにエラーがあることが判明しました。

解説:このエラーは単純に「イン」の消し忘れの可能性もありますが、原文の意味の切れ目を取り違えている可能性もあります。原文の意味の切れ目は以下の通りです。

            I have checked / in our application / and ~

従って、「チェックインした」ではなく「確認した」などと訳すのが自然だということがわかりますね。なお、「チェックインする」を使用する場合には、「アプリケーションチェックインした」「アプリケーションチェックインした」とするのが一般的です。

 

脱落・付加

原文:Everyone in this country, despite the ethnic group or tribe to which they belong, enjoys basic human rights.

訳文:すべての国民は基本的人権を享受し、人種、皮膚の色、言語、または信条を理由に差別を受けることはない

訳例:すべての国民は、属する民族や部族に関わらず基本的人権を享受する。

解説:原文の下線部(despite the ethnic group or tribe to which they belong)が訳出されておらず、訳文の下線部(人種、皮膚の色、言語、または信条を理由に差別を受けることはない)が付け足されています。差別は権利、平等などの文脈で一緒に語られることも多いですが、原文に含まれていない内容を翻訳者が勝手に付け足してはいけません。原文に忠実に、という原則を忘れずに訳出しましょう。

 

最後に、頻出エラーではありませんが、「一貫性」について少し触れたいと思います。おそらくみなさんご存知で、実践されていると思いますが、訳文の文体や訳語は文書内で統一するというのが翻訳の基本です。最近文字数の多い案件で特に、繰り返し出てくる重要な単語の訳が統一されていないものや、いわゆる「です・ます」調と「だ・である」調が混在しているものが目立ちます。例えば、ある小説に、Hanakoという登場人物がいるとします。彼女の名前が「花子」「華子」「はな子」と書かれていたら、それが同一人物なのか、別人なのか混乱しますよね。また、原文の筆者があえて同じ表現を繰り返し使っている場合、そこには何らかの意図があるはずです。重要な単語や表現はメモを取って見直し時に確認するなど工夫して、訳語を統一するようにしましょう。

 

今回取り上げたエラーや「一貫性」以外に、みなさんが翻訳時に感じている疑問や不明点があればぜひコメント欄でおしえてください。

 

 

余談ですが、先々月先月の投稿で秋の読書について触れました。秋もかなり深まってしまいましたが、私もようやく本を1冊読み終えることができました。チョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジヨン』です。韓国でベストセラーになり、日本で発売された当時も話題になっていましたよね。個人的に共感する部分が多く、韓国社会と日本社会の共通点や相違点を見つけながらあっという間に読み終えてしまいました。日本で生まれ育った女性、日本社会で働いている女性であれば、どの世代の方でも何か共感できる部分が見つかる物語だと思います。翻訳者は斎藤真理子さんで、韓国小説を何冊も翻訳されています。「好書好日」のインタビューで翻訳についても触れられているので、興味がある方は読んでみてください。

 

今月は以上です。また来月お会いしましょう!

 

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