みなさんこんにちは。LSのShioriです。気温がぐっと下がりすっかり秋らしくなってきましたね。近所の木々の葉っぱが落ち始め、暗くて長い冬がすぐそこまで迫っていることを思い知らされる毎日です。前回の投稿ではみなさんにおすすめの本を質問しました。私は今年も今のところ「食欲の秋」が優勢ですが、この後少しまとまった時間が取れそうなので、その間に読書に励みたいと思っています。おもしろい本があれば次回の投稿で共有しますね。
さて、今月の頻出エラーに移りましょう。現在MTPEの大きなプロジェクトが進行中のため、GoCheckレビューも大部分がMTPEの案件でした。今回の投稿ではMTPE以外の案件で多く見られたエラーを取り上げます。また、コンプライアンスエラーの中から気になるものもひとつ紹介したいと思います。
9月も誤訳が多く見られましたが、脱落も目につきました。脱落に関しては、訳出時に気を付けることと見直しを丁寧に行うことで防ぐことができると思います。今回の投稿では、誤訳の例を3つ取り上げます。それでは具体例を見ていきます。
原文:In the years that follow, other volunteers will test the new treatment.
訳文:その数年後に他のボランティア達は、新しい治療法を試すことになる。
訳例:それに続く数年の間に、他のボランティア達は新しい治療法を試すことになる。
解説:In the years that followの前には、「今後数週間のうちに、あるボランティアが新しい治療法を試す」という文があります。それを踏まえると、このIn the years that followは「(前の文で触れている)今後数週間」に続く数年間だということが読み取れますね。
原文:Despite enforcing a major pesticide ban last year〜
訳文:主要な殺虫剤を昨年強制的に禁止したにもかかわらず〜
訳例:昨年全面的な殺虫剤禁止令を施行したにもかかわらず〜
解説:この”major”は”pesticide”ではなく”ban”を修飾する語ですので、「主要な殺虫剤」ではなく「全面的な殺虫剤禁止令」などと訳出します。また、enforceには「強制する」という意味もありますが、規則や法令などと一緒に使う場合は「施行する」と訳出することが多いです。
原文:That is the evidence that he went through many difficulties in his former life as a pop star.
訳文:アイドル歌手として前世で彼がさまざまな困難を乗り越えてきたことの証である。
訳例:彼が過去にアイドル歌手としてさまざまな困難を乗り越えてきたことの証である。
解説:文脈を説明すると、これは実在する人物の芸術作品について書かれている文章で、この実在する人物が以前アイドル歌手として活動していたということはリサーチをすると判明する事実です。 his former lifeを「前世で」と訳したくなる気持ちはわかりますが、簡単なリサーチでこの人物が歌手だったのが「前世」ではなく「過去」だということがわかりますので、訳語は「過去に」「以前」などがふさわしいという結論に至ります。former lifeが「過去に」「以前」などという意味で使われることも多い表現だということを頭の片隅に置いておいてくださいね。
次に、コンプライアンスエラーについて少し触れたいと思います。数は多くありませんが、コンプライアンスエラーはなかなかなくなりません。9月に特に気になったのが、かぎ括弧と句点の使い方です。これはしっかりと決まりに従うことで防ぐことのできるエラーですので、この機会にGengoスタイルガイドをおさらいしましょう。
Gengoのスタイルガイドでは、かぎ括弧と句点の使い方を実例とともに説明しています。以下はGengoスタイルガイドからの抜粋です。
・段落の最後にある場合、句点は必要ありません。
例:「AIは翻訳業界を変えるだろう」<改行>
・括弧の外に文章が続く場合、句点は必要ありません。
例:「AIは翻訳業界を変えるだろう」と彼は言った。
・段落の途中にある場合、括弧の外に句点を打ちます。
例:「AIは翻訳業界を変えるだろう」。彼はそう言った。
一度ルールを覚えてしまえば難しくはないと思うのですが、慣れるまでは混乱して間違えてしまうかもしれません。何か疑問点があればお気軽にコメント欄でお知らせください。
最後に、MTPE(機械翻訳ポストエディット)の案件でごくわずかですが、原文は意味の通る文であるにもかかわらず、日本語の文として意味をなしていない文(きちんと修正されていない文)を目にすることがありました。限られた時間での作業ですので訳語や文体の統一など細かい部分の修正は不要ですが、日本語として読み手に意味の伝わる文になるように修正するのがMTPEです。もちろん原文に問題がある場合には、指示書にも書かれているように「PE不可」を挿入して機械翻訳の文をそのまま残しておいてくださいね。
今月は以上です。これからますます気温が下がる中、ドイツではガス不足による停電の可能性が叫ばれています。電気が使えず来月の投稿ができないという事態にならないように願うばかりです。それではまた来月!
5 comments
Hi Shiori,
I have read all your posts and have been always wondering why your translations often don’t match the source texts. For example, why did you translate the “major” below as 全面的 or “complete.” Is that intentional?
頻出するエラーについて(5月まとめ)
https://support.gengo.com/hc/en-us/community/posts/7250945578131-%E9%A0%BB%E5%87%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%A8%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6-5%E6%9C%88%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81-
I believe the source text previously was the one in the parentheses above (He had high accreditation from the police.) or something similar, and you translated it as “警察は彼が誰なのかを良く知っていた (meaning that the police knew very well who he was).” That struck me as weird, but to my surprise, you decided to make the source text wrong and corrected it to match your translation, instead of correcting your translation to align with the source text. It surprised me even more to know that the original translation was based on your understanding of the word “accreditation.”
You said:
(I strongly believe “He had high accreditation from the police” should be translated as 「警察に高く評価されていた」 or something like that.)
Did you really think “accreditation” can mean just “to know someone”? I don’t think anyone was convinced by your explanation. This is clearly not a matter of “lack of checking.”
Your translation basically says:
“I do a lot of laundry and have used a lot of detergents in plastic bottles, so I find these detergent sheets in the recycled-paper packaging are also really amazing.”
Don’t you realize your translation is unnatural? It sounds like the person is very fond of laundry so the person is excited by the arrival of a new type of detergent and like it just like those in plastic bottles. Ok, it is not entirely impossible. But the text does not say that at all. What it is saying is:
I do a lot of laundry and wasted a lot of plastic bottles of detergent, so I find these (environmentally friendly) detergent sheets in the recycled-paper packaging are really amazing.
https://therenewablebox.com/products/laundry-detergent-sheets-kind-laundry
This is a complete mistranslation, and of an unforgivable kind.
頻出するエラーについて(6月まとめ)
https://support.gengo.com/hc/en-us/community/posts/8009190043411-%E9%A0%BB%E5%87%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%A8%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6-6%E6%9C%88%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81-
According to your translation, the business is clearly Jane’s. This doesn’t match your explanation below,
according to which the business is Emily’s. Why is that? I believe the only reasonable explanation is that you don’t read the source text when reviewing jobs. This also matches the impression I got when I read the review I recently got on my job. I strongly believe that submitting a machine translation without proper polishing or reviewing jobs without reading the source text could constitute a breach of trust.
The above are just examples I find particularly egregious. Most of the time, I don't really understand or agree with what you are saying in your series of posts.
from Japanさん
貴重なご意見ありがとうございます。from Japanさんが違和感を抱かれた原因を考えてみました。おそらく、例として取り上げたエラーの文脈をお伝えできていないことが大きな原因だと思います。各ご指摘については、以下の通り回答いたします。
1点目ですが、前後の文脈や事実関係を確認し、「全面的な」と訳すのが適切と判断しました。投稿で取り上げている例は、GoCheckレビューでの実際のエラーの一部を変更したものです。Gengoの方針として実際の文や、前後の文を載せることができません。そのため文脈をはっきりお伝えできず、訳例が不適切と感じられたのかもしれません。ですがあくまで訳例ですので、より良い訳があればぜひお知らせください。
2点目については、すでに該当の投稿のコメント欄でも経緯を説明しましたが、私のミスで使用した原文と訳文が一致していなかったため、原文を正しいものに差し替え、エラーが含まれていた訳文はそのまま残してあります。”accreditation”についてはjoncolemanさんがコメントで解説してくださっていますので、そちらをご参照ください。
3点目も、前後の文を載せられず文脈が伝わっていないため不自然な訳だと感じられたのかなと思うのですが、原文の筆者はこの文の前にすでに具体的な製品をあげて、その環境に配慮した製品が素晴らしいと述べているのです。それを受けて、再生紙の箱に入った洗剤シート「も」素晴らしい、と訳しています。
4点目も同様に、文脈をご理解いただければ誤解が解消できると思います。この原文と訳例だけみると、ジェーンとエミリーが何者か、2人の関係性がどのようなものかは一切わかりません。ですが、全文を読むと両者ともに経営者であり、エミリーはジェーンの事業の発展に貢献してきたことがわかります。関係性が理解できると、この訳例のような訳し方になるかと思います。
なお、コメントで触れられている機械翻訳やレビューに関してですが、懸念や疑問がありましたら、再レビューの申請や、サポートをご利用ください。
繰り返しになりますが、投稿で取り上げている例はあくまでGoCheckレビューからの抜粋に、Gengoの方針として一部変更を加えたものです。文字数や著作権などの関係上、全文を公開することができませんので、例としてあげている文がすべてではなく、その前後にさまざまなことが書かれているということを頭の片隅に置いて、今後の投稿に目を通していただけると幸いです。こちらでも、いただいたご意見を踏まえて、文脈の説明を増やし、より伝わりやすい例を取り上げるよう投稿内容を改善していきたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。
Shioriさん
ご回答ありがとうございます。ShioriさんがLSで私がレビューを受ける立場でなければしつこく言いたくありませんが、そうも言っていられないので以下私からの回答です。
(1)
> 1点目ですが、前後の文脈や事実関係を確認し、「全面的な」と訳すのが適切と判断しました。
変更するならなぜ一貫性が保たれるように変更しないのですか? 難しいことないですよ。どう正当化しても、majorを「全面的」と訳すことに強い違和感があることに変わりありません。
> 原文:Despite enforcing a major pesticide ban last year〜
> 訳例:昨年全面的な殺虫剤禁止令を施行したにもかかわらず〜
> より良い訳があればぜひお知らせください。
「大規模な殺虫剤禁止令」で何の問題もないはずです。
(2)
have accreditationを「知られていた」と訳したことにも驚きましたが、その訳がaccreditationという語に対するShioriさんの解釈に基づいている(らしい)ことにもっと驚いたと申し上げているのです。これは確認不足や勘違いですませられる問題では絶対ありません。英語力に問題があります。
> 「Cambridge Dictionaryで確認したところ、「accreditation」には以下の意味があるようです。
> "the fact of being officially recognized, accepted, or approved of, or the act of officially recognizing, accepting, or approving of something"」
> 警察に正式に認識されていた事実があるということは、警察は彼が誰なのかよく知っていたということになりますね。
(3)
> 原文の筆者はこの文の前にすでに具体的な製品をあげて、その環境に配慮した製品が素晴らしいと述べているのです。それを受けて、再生紙の箱に入った洗剤シート「も」素晴らしい、と訳しています。
何をおっしゃりたいのか分かりません。「具体的な製品」とは洗剤シート以外の環境に配慮した製品を指しているのですか? それがなぜ、going through so many plastic bottles of laundry detergentを「プラスチックのボトルに入った洗剤を非常にたくさん使ってきました」と訳す根拠になるのですか? “also” は私も疑問に思ったのですが、Gengoの案件はそもそも適切に推敲された文章ばかりではないですし、話し言葉で “also” のように無意味な言葉が混じることは日本語でも珍しくありません。でも、別の環境に配慮した製品に言及されているなら、それを受けているのでしょう。でも本当にその文脈で訳例のようになったのなら問題はさらに深刻なはずです。detergent sheets in the recycled-paper packagingなどで検索してみてください。どのページを見ても “No plastic” や “plastic fee” のような文脈でplasticという語が使われているはずです。
I do a lot of laundry, so I was going through so many plastic bottles of laundry detergent, so these detergent sheets in the recycled-paper packaging are also really amazing.
私はよく洗濯するので洗剤が入ったプラスチックボトルを非常にたくさん無駄にしてきました。だから再生紙の容器に入ったこの洗剤シートは(も)とても素晴らしいですね。
などで問題ないはずです。
最後になりましたが、原文をそのまま掲載できないことが、原文と訳文が一致しないことの釈明になってしまっていますが、そのような投稿にどのような教育的価値があるというのですか? 特に2は致命的です。
from Japanさん
コメントありがとうございます。
(1)
"major"はもちろん「大規模な」と訳すこともできますね。ですが、この例で取り上げた文が、ある国で殺虫剤の使用が一切禁止になったという事実に関する文だったとしたらどうでしょうか。この場合、「全面的な」と訳しても問題ないのではないでしょうか。事実関係や文脈を考慮して訳出すると、辞書に載っている訳語だけでは訳せないこともあります。
(2)
すでに前回のコメントや他の方への以前のコメントでも説明した通りです。
(3)
おっしゃる通り、先に環境に配慮した別の製品(柔軟剤のかわりとして使えるボール)をあげて、その製品がいかに素晴らしいか筆者は述べています。そして、筆者はたくさん洗濯をするため今まで「プラスチックのボトルに入った洗剤をたくさん使ってきた」(これは単なる事実です)が、再生紙の箱に入った洗剤シートは素晴らしいと続きます。原文では"wasted so many plastic bottles of~"と言っていませんので、「使ってきた」と訳しても問題ありませんね。もちろん入れ物のプラスチックのボトルがゴミとして処理された可能性は否定できませんが、洗濯に必要な洗剤が無駄になってきたわけではありません。プラスチックのボトルもリサイクル可能ですので、実際ボトルが無駄になっていなかった可能性も考えられます。翻訳者の思い込みで意訳するよりも、原文に忠実に訳出するほうがいいのではないでしょうか。
投稿で取り上げている例は、少なくとも1名、またはそれ以上のLSが確認したGoCheckレビューで実際に見られたエラーに基づいています。原文と訳文が一致していないということはありませんので、その点はご理解いただけますと幸いです。
>ある国で殺虫剤の使用が一切禁止になった
そんな国があるのかと、純粋にそのニュース(特定の記事ではなく)が気になったので、具体的にどこの国か教えて頂けますか。検索しても見つけることができませんでした。