みなさんこんにちは。Language SpecialistのShioriです。欧米ではイースター休暇が終わり、日本ではゴールデンウィークが始まりましたね。新緑が美しく、外での活動にぴったりな季節、いかがお過ごしでしょうか。さて毎月恒例(?)となりました、エラーに関する投稿です。前回の投稿はすでにお読みいただけましたか?今回は3月のGoCheckレビューで多く見られたエラーをいくつか紹介します。さらに、1月の投稿と同様に各エラータイプが占める割合も紹介したいと思います。
1月の投稿でも紹介しましたが、GoCheckレビューのエラーには7種類あります。みなさんは最も頻出するエラーがどのタイプのものか、予想できるでしょうか。まずは「Wrong Term(間違った語句)」が49.6%で一番多く見られたエラーでした。これは予想が簡単だったかもしれませんね。続いて18.7%で「Syntax(構文)」、さらに12.9%で「Omission & Addition(脱落と付加)」です。「Compliance Error(コンプライアンスエラー)」(8.4%)、「Spelling(誤字)」(6.3%)、「Punctuation(句読点)」(2.6%)と続き、最後は「Word Structure & Agreement(語句の構造)」(1.5%)でした。
それでは、実際のエラーをいくつか見ていきましょう。
実例1
原文:Perhaps more for docking a sailboat at Belle Harbor in New York than running a motorbike through Hell, California.
訳文:カリフォルニアの地獄をバイクで走るというよりも、ニューヨークのベルハーバーでヨットを停泊させるのに向いているかもしれない。
訳例:カリフォルニアのヘルをバイクで走るというよりも、ニューヨークのベルハーバーでヨットを停泊させるのに向いているかもしれない。
こちらはWrong Term(間違った語句)としてマークされたエラーです。地名(固有名詞)である ”Hell” が単なる名詞として訳されていますね。単語の最初の文字が大文字になっている場合には、固有名詞である可能性を疑ってみてください。インターネットで検索すれば、大抵の場合答えが出てきます。ただ、「地獄」という意味で使う際にもHを大文字にすることはあるので、この例文の場合は見極めるのが少し難しかったかもしれません。ですが、「カリフォルニアの地獄」を意味する英語は ”hell in California” であり、前置詞のin が必要ですね。したがって、ここでは別の何かを意味するということがわかるでしょう。
実例2
原文:〜these source said, citing confidential French intelligence information.
訳文:〜フランス情報機関の情報を引き合いに出してそう語った。
訳例:〜フランス情報機関の機密情報を引き合いにだしてそう語った。
続いて多かったのが上記の例のようなOmission(脱落)のエラーです。このようなエラーを防ぐには、原文をしっかり読んで理解すること、そして毎回お伝えしていますが、提出前の見直しが非常に、非常に重要です(詳しくは前回の投稿をご参照ください)。脱落のエラーは「訳漏れ」「訳抜け」などとも呼ばれ、CATツールの使用や単語や文を色分けして見直しするなどの防止策がインターネット上で紹介されています。Gengoの仕事ではそのような防止策を取るのが難しい場合が多いと思いますので、原文を十分に理解して訳出に挑み、最後の見直しまで気を抜かずに丁寧に取り組みましょう。
実例3
原文:this development is inspired by political will, driven by the Queen, to recognize the role of retired soldiers and what they can achieve in all professions and projects.
訳文:この発展は、退役軍人の役割や、あらゆる専門的職業やプロジェクトで彼らが達成できることを認知するため、政治的意志により発想が得られ、女王により推進されている。
訳例:この発展は、退役軍人の役割や、あらゆる専門的職業やプロジェクトで彼らが達成できることを認知するという、女王の政治的意志がインスピレーションとなったものである。
こちらのエラーはSyntax(構文)としてマークされました。訳文からは日本語のぎこちなさを感じますね。逐語的に訳されているため、日本語として不自然に聞こえるのだと思います。元の訳からは原文の部分的な意味は正しく理解されていることがわかりますが、文の繋げ方に問題があります。このようなエラーを防ぐためには、日本語の能力を高める努力が必要です。お気に入りのブログやコラムなどを読むときに、「日本語として伝わりやすく、自然で正しい表現」はどのようなものか、読んでいる文章にどのような間違いが含まれているかを意識してみると、日々の生活の中で日本語の能力を磨くことができると思います。もちろん日常的に新聞を読んだり、「正しい日本語」について書かれた本を読んだりできればもっといいですが、無理のない範囲で少しずつ楽しみながら、が長く続けるコツですよね。
さて、3月の頻出エラーを紹介しました。「またエラーの投稿か」と思われた方もいるかもしれません。ですが、実際のエラーに触れることは、普段の翻訳の見直しや、ご自分のエラーの傾向の理解と改善に役立つはずです。今後はエラー以外のテーマでも定期的に投稿していく予定ですので、ぜひ引き続きお付き合いくださいね。
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