こんにちは。京都に住む友人から今年は桜の開花が早そうだ、と聞きましたが、みなさんがお住まいの地域はいかがでしょうか。地元北海道は例年5月に開花時期を迎えるため、卒業・入学シーズンに桜を見ることはありません。東京に住んで約1年経った頃、自宅前の桜並木が満開になった際には、あまりの美しさに感動したのを覚えています。満開の桜の木の下でのお花見の楽しさも東京で初めて味わいました。美しく咲き、はかなく散っていく桜を見るたびに、日本に生まれて良かったとしみじみ思ったものです。実はドイツ国内にもいくつか桜の名所が存在します。ベルリンの壁跡地や、ベートーヴェン生誕の地ボンの旧市街などで、日本と若干趣は異なりますが、綺麗な桜を眺めることができます。
それでは、毎月恒例のエラーに関する投稿に移りましょう。先月の投稿はこちらから。コメントを寄せてくださる方がいて嬉しい限りです。お気づきの点や感想など、引き続きお気軽にコメント欄に書き込んでください。少しお時間をいただくこともあるかもしれませんが、できる限りお返事します。
2月のエラーの傾向としては、脱落・付加のエラーが多い印象でした。引き続き誤訳も多く見られましたので気をつけましょう。コンプライアンスエラーも発生していますが、今月は特に依頼者の指示に従っていないためにエラーとなってしまったものがいつもより目立っていたように感じます。指示が記載されている場所は案件によって異なりますので、ワークベンチやワークベンチのコメント欄をしっかり確認の上、翻訳に取り掛かるようにしましょう。場合によっては、原文の中に三重角括弧でくくられた指示が隠れていることもあります。Gengoスタイルガイドの確認もお忘れなく。今回の投稿では、付加、慣用表現、固有名詞に関するエラーを見ていきます。
付加
原文:There is little information available on animal shelters in this country, including the demand and financing mechanisms.
訳文:この国では、需要やファイナンス・公的資金等のメカニズムなど、動物保護施設に関する情報がほとんどない。
訳例:この国では、需要や資金調達の仕組みなど、動物保護施設に関する情報がほとんどない。
解説:financing mechanismは「資金調達の仕組み」などと訳されることが多い表現です。また、financing単体で見ても、「公的資金」という意味はありませんので、「公的資金」が付加のエラーの対象となります。
慣用表現
原文:I was not going to pump any iron as recommended in my training plan.
訳文:トレーニング計画で推奨されているような鉄分を摂取するつもりはなかった。
訳例:トレーニング計画で推奨されているようにバーベルをあげるつもりはなかった。
解説:注)これはウェイトトレーニングの計画について書かれた文書からの抜粋です。
pump ironは慣用表現で、「バーベルをあげる、重量挙げをする」などと訳されます。慣用表現の中には直訳だと意味不明なもの(例:rain cats and dogs/大雨が降る)もありますが、この例のようになんとなく意味が通じるようなものや、複数の意味を持つもの(例:miss the boat/チャンスを逃す、要点を把握し損なう)もありますので、知識を増やして適切に訳出できるようになりたいですね。
なお、「あげる」にどの漢字を使うかについて、「毎日ことば」に興味深い投稿がありましたので気になる方はこちらをご一読ください。
固有名詞
原文:World Cancer Day
訳文:世界がんデー
訳例:ワールドキャンサーデー または 世界対がんデー
解説:国際デー(国際機関によって定められた記念日)はたくさんありますが、その中で正しい日本語表記がすぐに思いつくのはどのくらいあるでしょうか。英語表記から日本語表記が容易に想像できるものもありますが、中には例であげた「世界対がんデー」のように、思わず間違えてしまいそうな日本語表記を採用しているものもあります。ウィキペディアには「国際デー」のページがあり、そこで日英併記になったリストが見られます。ですが、必ずしも広く使用されている日本語表記が載っているわけではないようですので、参考程度にとどめて、それぞれ個別に関連団体などが採用している表記を確認することをおすすめします。
なお、企業名や人名など固有名詞の誤表記は毎月のように発生しています。必ず正しい表記を確認してください。調べてもわからない場合には、依頼者にコメント欄でその旨を伝え、英語表記のまま残す、または日英併記にすると、エラー指定を避けられると思います。
上記の例はすべてGoCheckレビューで実際に見られたエラーに、一部変更を加えたものです。訳例はあくまでもともとの訳文にエラーの修正を加えた一例で、それだけが正解だというわけではありません。別の訳や解釈などがあれば、ぜひお聞かせください。 今月は以上です。それではまた来月。
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