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こんにちは。シニアトランスレーターのShioriです。今日は、翻訳のレビューをする中で頻繁に遭遇する「誤訳」について、実例をあげてお話ししたいと思います。

 

その前に、簡単に自己紹介を。北海道出身、ヨーロッパ在住で、約2年半前に独立し、フリーランスの翻訳者としてお仕事をしています。独立以前は日本の医療機器メーカーで通訳・翻訳業務に携わっていました。

 

さて、みなさんは「誤訳」にどのようなイメージをお持ちでしょうか。一言に「誤訳」と言っても、それが起こる原因は様々です。しかし、どんな誤訳でも、うっかりミスでは済まされず、依頼者に多大な迷惑をかけてしまう可能性がありますよね。翻訳者としてはできる限り避けたい誤訳ですが、では、どうしたら防ぐことができるのでしょうか。今回は、初歩的な誤訳とその対策を紹介したいと思います。

 

実例1 – 固有名詞は必ず調べる

原文:The most popular football leagues in this country are the Premier League and LaLiga.

訳文:この国で最も人気の高いサッカーリーグはプレミアリーグとラ・リーグです。

基本中の基本ですが、意外と見落としがちなのが固有名詞。LaLigaをインターネットで検索すると、日本語表記が「ラ・リーガ」であることがすぐにわかります。固有名詞は日本語表記が決まっていることも多いので、必ずインターネットで検索して正しい表記を使用するようにしましょう。

 

実例2 - 複数形、冠詞の有無に注意する

原文:In the past 3 months, I did more than they did in last decades for the community.

訳文:私はこの3カ月間で、彼らがコミュニティのために過去10年間に行ったよりも多くのことを行った。

原文はin last decadesと複数形になっているので、「過去数十年間」が正しい訳ですね。日本語は英語のように語尾変化で複数形を表すことがないので、複数形の-s/-esを見落としたことがある方も多いのではないでしょうか。また、もし「過去10年間」と期間を限定しているのであれば、英語ではin the last decadeとなりますので、冠詞の”the”が必要なはずです。細部まで注意を払って原文を読み、訳出することで、こういった誤訳をなくすようにしましょう。

 

実例3 - 辞書を引く

原文:A NY-based non-profit organization recently released an open-source interoperability standard for autonomous mobile robots.

訳文:ニューヨークを拠点としたNPOは最近、オープンソースのモバイル自律型ロボット用相互運用性規格を発行しました

releaseを辞書で調べると、「発行する」という意味が含まれていないことがわかります。また、「発行」を辞書で調べると、①図書・新聞などを印刷して世に出すこと。②貨幣・証券・証明書などを作って通用させること、とあります。英語の意味と日本語の意味の両方から、この訳語が適切でないということがわかりますね。ここでは、「発表/公開しました」と訳すといいでしょう。releaseのように目にする機会が比較的多い、馴染みのある単語でも、訳語の選択に迷ったときには必ず辞書を引いて、適切な訳語を選択するようにしましょう。英和辞典に載っている意味だけで判断できないときには、英英辞典を確認するのもおすすめです。

 

実例4 - 文書の使用目的に合った訳語を選ぶ

原文:Iran maintains a powerful influence on Iraqi domestic politics through political parties that receive financial support from Tehran.

訳文:イランは、テヘランから財政的支援を受けている政党を通じて、イラクの国内政治に対する強力な影響力を維持している。

こちらはニュース記事の翻訳から抜粋しました。Tehranはイランの首都ですので、テヘランと訳したくなってしまう気持ちはわかります。しかし、英語のニュース記事では同じ言葉の繰り返しを避けたり、文章を完結に書いたりするために、「○○政府」のかわりにその国の首都名を使うことがあります。日本語のニュース記事では、そのような書き方はしませんね。したがって、このTehranの訳は「イラン政府」となります。

 

どんな案件でも、誤訳がない翻訳ができたら理想的ですよね。でも、毎回100点満点の成果が出せるかといえば、なかなか難しいのが現実です。今回紹介した誤訳と対策はどれも初歩的なものですが、最近プロとして翻訳のお仕事を始めた翻訳者のみなさんも、豊富な経験をお持ちの翻訳者のみなさんも、この投稿をきっかけに、一度基本に立ち返っていただけたらうれしいです。

2 comments

  • 2
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    fudesaki

    JA>FR 翻訳者としても、大変勉強になりました。ありがとうございました!

     
  • -1
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    yt5858

    >また、もし「過去10年間」と期間を限定しているのであれば、英語ではin the last decadeとなりますので、冠詞の”the”が必要なはずです。

    この部分のご説明はおかしいです。「過去10年間」も「過去数十年間」も期間を限定していることには変わりありません。調べてみましたが、複数形の場合も単数形の場合も、この "the" は省略されることがあるようですね。

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