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お客様が案件の修正を依頼したり、承認を拒否したりされる場合に最も多いのが、「翻訳が直訳調で不自然」「日本語として読みづらい」といったフィードバックです。

こうした評価を受けた場合、どのように対処すべきでしょう。「フィードバックが漠然とし過ぎていて何を直せばいいのか分からない」と思われたことはありませんか。

お客様は多くの場合翻訳者ではありませんから、何がどう不自然なのかを説明してはくれません。しかし、「不自然」「読みづらい」という実感は事実であり、そこには必ず理由があります。そして、その理由は1つではありません。

今回のレッスンでは、翻訳が「不自然」で「読みづらく」なってしまう主な原因を紹介します。全ての翻訳に関して当てはまる内容がほとんどですので、ぜひ参考にしてください。

 

1. 単語

1-1. 用語の誤り

例)次のバグ対策リリースは2018年4月4日に予定されています。(原文:The next bugfix release is scheduled for April 4, 2018.)

正しくは「バグフィックス」です。ソフトウェアの分野で「bugfix」を「バグ対策」とした場合、それだけで翻訳全体が稚拙と判断されかねません。こうした用語については、Google検索などを活用し、実際に使用されている訳語を確認する必要があります。

1-2. 英和辞典訳

例)食事プランを守るだけで、あなたの身体と意識にどんな素晴らしいことが起こるのか見てください。(原文:Just stick to the meal plan and see how great things happen to your body and thoughts.)

「see」をそのまま「見る」としたことが問題です。これは基本的な例ですが、英和辞典の最初の意味をそのまま採用したと思われる翻訳は非常に多いです。特に、Google検索をかけて最初に出てきた訳語をそのまま使用しているケースが多いです。簡単な単語であっても、必要に応じて英英辞典を活用し、単語の核となる意味を把握した上で訳語を選択してください。

1-3. カタカナ語

例1)イスラエルで開催されるこのフラグシップ会議は、暗号学の分野で最も名声のあるアカデミックイベントのひとつである。(原文:The flagship conference, hosted in Israel, is one of the most prestigious academic events in the cryptography field.)

「フラッグシップショップ」「フラッグシップモデル」といった表現を時折目にすることはありますが、「フラッグシップ会議」は明らかに不自然です。「flagship」とは、本来「第一の、最も重要な」といった意味を表す単語ですので、それが分かるように翻訳する必要があります。また、後半の「アカデミックイベント」については、実際に使用例も見られるため、特に問題ありません。このように、どれだけ一般的な用語なのかを確認しながら訳語を選択してください。

例2)上の「追加する」をクリックして、この拡張機能のインストレーションを完了してください。(原文:Click “Add” above to complete installation of this extension.)

正しくは「インストール」です。これは原文の「installation」をそのままカタカナに直してしまったことによる誤りです。

2. 文

2-1. 意味関係の読み違い

例)私たちは最高のマクロ管理法を提供し、あなたが毎日食べる必要のある炭水化物、タンパク質、脂肪に基づいています。(原文:We offer best macro nutrition based on carbs, protein and fat you need to eat daily.)

三大栄養素に基づいているのは「マクロ管理法」なのですが、この訳文では「私たち」が三大栄養素に基づいているかのように読めてしまいます。問題の原因は原文の修飾関係が正しく把握できていないことです。文章を読み返し、意味が分かりづらい場合、文章構造を正しく把握できているかを注意深く見直す必要があります。

文法的な基礎力が足りないと思われる場合、参考書などを活用して基礎的な文法事項を学習してください。直感だけでは翻訳はできません。

2-2. コロケーション

例)近頃、ある米市場調査会社によって行われた調査が、米国民における仮想通貨の所有、関心、性別分布の統計を明らかにしようと試みた。(原文:A recent survey conducted by a market research company in US set out to find cryptocurrency ownership, interest, and gender distribution statistics for the American population.)

コロケーションとは、各言語特有の言葉の対応関係です。例えば、英語で「I have lunch」といった場合に、「昼食を持つ」とは訳せません。例に関しては、主語が「調査が」となっているのに、「試みた」が対応していません。「調査が行われ、〜が明らかになった」や、「調査会社により、〜を明らかにするための調査が実施された」など、工夫して訳出する必要があります。

2-3. 助詞(てにをは)

例)このリリースは非常に重要な改善や、新しい機能などが含まれています。(原文:The release includes several very important fixes and new feautures.)

正しくは「リリースには」です。1文が長くなる場合、助詞が正しく機能しているか注意が必要です。特に、一度訳した文章の一部を修正した場合に助詞のズレが起きやすいです。

2-4. 冗長な表現

例1)クリーンエネルギーへの移行を進めることで、今後数十年間だけでおよそ400万人を救うのに十分なレベルを削減することができることがわかった。(Expediting the shift to clean energy could reduce levels enough to save as many as four million lives alone over the coming decades.)

問題は最後の「削減することができる」です。「すること」は必要なく、「削減できる」で十分です。これは英語でよくある冗長な表現ですが、「to+動詞」を盲目的に「〜すること」と訳してしまうことが原因です。翻訳においては非常に不自然で稚拙な印象を与えますので注意してください。

例2)最新版への移行のさらなる詳細の移行アナウンスメントをご覧ください。(原文:See the migrate announcement for further details on migrating to the latest version.)

この例では、原文の「for」「on」「to」という前置詞を全て「の」と訳してしまったことにより、非常にぎこちなく意味が読み取りづらくなっています。また「移行」が重複している点も問題です。これは、原文の「migrate announcement」と「details on migrating」をいずれも逐語訳したことが原因です。文章を整理し、「最新版への移行についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのアナウンスメントをご覧ください」といった訳にする必要があります。

2-5. 長過ぎる文

例)私たちが賢い予算編成を作成してきたというユーザーの金融マネジメントを簡略化することは、それぞれの支払いカテゴリーへの合計金額からの日々や月々の支払いの安全性を示します。(原文:To simplify user’s finance management we have created smart budgeting, that shows day to day and month to month safe to spend sum on each spendings category.)

原文の句読点を訳文でそのまま踏襲する必要はありません。1文が長過ぎて読みづらいと感じられる場合、適宜文章を区切って内容を整理してください。例の場合、「ユーザーの資産管理を簡略化するために、私たちはスマート予算編成を生み出しました。それは各支出カテゴリーにおいて、その日ごと、およびその月ごとに安全に使える金額の合計を教えてくれます。」といった訳が考えられます。

 

 

以上です。いくつか例を提示しましたが、全てに共通して言えることは「訳文の見直しで防げる問題」ということです。見直しといっても、特別な作業は必要ありません。ただ翻訳後に、訳文を最初から最後まで通読するだけです。それだけで、上記の例をはじめとして多くの問題が修正できます。

Gengoのレビューでは、こうした表現の問題をエラーとして評価しない場合もありますが、お客様はこうした点に非常に敏感ですし、場合によっては「機械翻訳」というレッテルを貼られてしまうおそれもあります。十分に注意して、自然で読みやすい翻訳をご提供いただくようお願いします。

 

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4 comments

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    Takashi

    「一読して何のことか分かりません」「まだ直訳調です」と複数回修正依頼を頂いたことがありました。「(ニュースではなく)娯楽作品として映画が制作されるようになり」「コカコーラ社は(製品そのものというより)イメージをアピールしているのです」など、原文にはない(  )内を加筆してようやく承認してもらえました。補わないと一般的な日本人には読みにくいというのは、最初から分かっていたのですが、スタイルガイドがありますので。

    「加筆・修正という形で対応します」

    「今後依頼される場合『原文に必要以上にとらわれず、日本語として分かりやすい訳を心掛けて下さい』とご指示いただければ、最初からこのように対応致します(色々と事情がございまして)」とお客様に対しメッセージを送り、ご満足頂けたようです。

    お客様が求める翻訳内容は、同じ原文でも違うことはあると思います。原文にない内容を追加するのは、原則としてご法度なのが筋だとは思います。ただし、こういった場合もありますので、ご検討願えれば幸いです。

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    chikara.shimizu

    @Takashi さん

    コメントありがとうございます。

    スタイルガイドには、(注)(*)といった記号を文中に挿入しないよう指示があります。また、文中から判断できない内容の追記は省略と同様に減点対象となります。

    ただし、文脈的に自然であり、さらに文中から推測できる範囲の内容であれば、追記は減点対象とはなりません。特に、「The」や「It」など、前述の内容を引き継ぐ単語は、日本語で適宜意味を補足した方が自然に訳せる場合があります。

    こうした対応をして減点対象となった場合、その旨フィードバックいただくことは可能です。とはいえ、訳文に括弧書きを多用してしまうとそれはそれで文章が読みづらくなるおそれがあります。例えば、関係代名詞以下の内容を括弧書きとする訳し方などは、日本語として不自然な印象を与えるおそれがあります。

    そういった点を踏まえ、読み手にとって分かりやすい翻訳を心がけていただければと思います。

    Edited by chikara.shimizu
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    Andrew

    Shimizu-san, is there no one at Gengo that could write guides like this for translating into English? I think it would be very useful for everyone. 

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    chikara.shimizu

    @andrew.heijoushin

    Thank you for your comment. 

    Providing these lessons is a kind of our experiment to improve quality of translation on Gengo. So, if translators think they are helpful to improve their translation, we'd love to provide these kinds of lessons for other language pairs.

    I cannot promise anything here, but we are very glad to have your positive feedback and we'll definitely consider what we can do for you :)

    And also, we already have some lessons in English on our Resources page. If you haven't checked them yet, please take a look.

    Edited by chikara.shimizu
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